こんにちは、管理人のまっしーです。
今回は、久しぶりに樽屋雅徳さんの作品をご紹介したいと思います。
今回取り上げるのは、2021年3月にリリースされた新曲『ラ・ジョコンダ』(仏:La Joconde、伊:La Gioconda)です。
当サイトではこれまでにも樽屋雅徳さんの曲をご紹介してきましたが、今回ご紹介する『ラ・ジョコンダ』は、グレードが「5」と比較的難易度の高い3楽章構成の大曲となっています。
曲の冒頭からかっこ良さ全開で、私たち演奏者の挑戦心をかき立てられるような魅力あふれる曲であり、今後コンクールの自由曲や演奏会のメイン曲としても人気が出てくるものと思います。
今回は、そんな大ヒットの予感のする『ラ・ジョコンダ』について、曲の背景などの解説や演奏動画とともに、あれこれご紹介していきたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください!
ところで「ラ・ジョコンダ」ってどういう意味?

フランス語かイタリア語だということは分かるんだけど・・・
あまり馴染みのある言語ではないからピンと来ないですよね。
…という訳で先に答えを言いますと、『ラ・ジョコンダ』とは、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたあの名画《モナ・リザ》を意味しています。

え? なぜ「ラ・ジョコンダ」が「モナ・リザ」という意味になるの?
はい、「La」はフランス語やイタリア語で女性名詞の前に付く定冠詞の一つで、「Joconde」は「リザ・デル・ジョコンド」という女性の名前なのですが、この「リザ・デル・ジョコンド」という女性が名画《モナ・リザ》のモデルとされているからなのです。

その「ジョコンド」という女性は、いったい何者なの?
リザ・デル・ジョコンドとは何者なのか?
リザ・デル・ジョコンンド(1479-1542年)は、イタリアの旧家であるゲラルディーニ家出身の女性で、フィレンツェの裕福な絹商人フランチェスコ・デル・ジョコンドの3番目の妻として10代の若さで嫁ぎ、のちに5人の子供にも恵まれることになった母親でもありました。
名画《モナ・リザ》のモデル?
ジョコンド夫妻は結婚当初はフィレンツェにある共同賃貸住宅に住んでいたのですが、1503年に夫・フランチェスコが邸宅を購入すると、新居購入のお祝いと、次男アンドレア誕生のお祝いを兼ねて、フランチェスコがレオナルド・ダ・ヴィンチに妻・リザの肖像画の作成を依頼したのです。

つまり、依頼者の妻であるリザが絵のモデルになったんだね
その肖像画は、リザの名前から《モナ・リザ》と呼ばれるようになったのです。ちなみに、モナはマドンナの省略形で、「私の貴婦人」という意味です。

リザという名前がモナ・リザの由来だったのね
名画《モナ・リザ》について
この曲を演奏するなら、名画《モナ・リザ》についても是非知っておきたいものです。
せっかくなので、予備知識として簡単にご紹介しておきます。
実は私、ときどき仕事の合間に休暇を取ってパリに行くことがあるのですが、絵を見るのが好きで、よくルーヴル美術館に立ち寄ってはモナ・リザを眺めています。
ルーヴルは丸一日かけても見きれないくらい広大な美術館なのですが、モナ・リザの前だけは必ずと言っていいほど大混雑で、大抵いつもこのような状態です↓(撮影者:まっしー)。
人だかりの向こうに見える絵が分かるでしょうか? あれが《モナ・リザ》です。

意外と小さいと感じる方が多いかと思いますが、縦77cm×横53cmというサイズで、当時の肖像画としては極めて大きなものだと言われています。近くで見るとこのような絵です↓。

何とも言葉では言い表せない魅力のある絵です。
じっと見つめていると、逆に自分が見つめられているかのような錯覚に陥るから不思議です。
ちょっと試しにモナ・リザの目を正面からではなく斜めから見てみてください。モナ・リザの視線もこちら側に移ってくるように見えませんか?
《モナ・リザ》にまつわる多くの謎
それにしても、なぜ《モナ・リザ》はこれほどまでに多くの人を惹きつけるのでしょうか?
理由は多々あるとは思いますが、もしかするとこの絵に秘められた数々の「謎」もまた、人々の心を惹きつけているのかもしれません。
この「謎」について、いくつかご紹介したいと思います。
①モデルにまつわる「謎」
《モナ・リザ》のモデルはリザ・デル・ジョコンドであるとお話ししましたが、実はこれには諸説あります。
驚くべきことに、2015年、フランスの科学者パスカル・コット氏は、マルチスペクトルカメラによる解析の結果、モナ・リザの微笑の下には3つの肖像画が隠されていることを発表しました。
同氏は、「モナリザの下に描かれている3つの肖像画のうちの1つがリザ・デル・ジョコンドと思われる」とも述べています。
これが事実だとすると、今わたしたちが目にしている絵画の女性は一体誰なのでしょうか。
②依頼主の手に渡らなかった絵画の「謎」
これも不思議なことに、実はこの絵は、一度も依頼主の手に渡ることがなかったのです。
ダヴィンチが絵の制作に着手したのが1503年頃で、そこから1506年頃まで約4年もの歳月をかけて制作にあたったのですが、それでもなお満足が行かず、ダ・ヴィンチが死を迎える1519年までの間ずっと手元に置いて何度も加筆を重ねたのです。
なぜダ・ヴィンチはそこまでこの絵にこだわったのでしょうか。
また、リザ・デル・ジョコンドが絵のモデルであるならば、なぜ夫で依頼者であるフランチェスコの元に絵が納められなかったのでしょうか。
③微笑みに関する「謎」
モナ・リザの表情をよく見ると、何とも言えない魅惑的な微笑みをしていることが分かります。
不思議なことに、見る角度や絵との距離によっても、あるいは見る人の心情によっても微笑みの印象が異なるとされ、ある人にとっては幸せな笑顔に見えるものの、別の人にはあざけりや悲しみの表情などにも見えると言われています。
この「微笑み」の意味は、5世紀もの長きにわたり多くの人の間で論争となってきました。しかし、どれだけ科学が発展したとしても決して謎が解明されることはなく、今後も「永遠の謎」として人々に語り継がれていくことでしょう。
【解説】曲について
さて、ここから本題に入ります。曲についての解説です。

やっと本題だね! 今回はまっしーの話がめっちゃ長かったからね
曲は、3つの楽章で構成されています。それぞれの楽章についてご紹介します。
第1楽章「神秘」 – Mystere
冒頭から、強烈な印象を与えるテーマによって幕が開きます。♩=162の早めのテンポで木管楽器による音階が鳴る中、金管楽器とサックスによるテーマがインパクトをもって奏でられます。
トランペットをはじめ様々な楽器が代わるがわる怒涛のように押し寄せては引き、次々と場面転換しながら各楽器にテーマが引き継がれていきます。
「神秘」という標題が付けられているとおり、絵画《モナ・リザ》にまつわる数々の謎やミステリアスな事象が想起され、聴く人を神秘の世界に引き込んでいきます。
次々とテーマが展開・変化しながら各楽器に受け継がれてゆき、エネルギーが高まったところで再びテーマが再現されると、トムやコンガのリズムの刻みとともに、謎を残すような形で楽章を終えます。
第2楽章「微笑み」 – Sourire
2楽章は、一転してゆるやかなメロディから始まります。
穏やかに流れるフルートとクラリネット、ハープの調べは、やがてクラリネットのソロ、オーボエのソロへと受け継がれていきます。しなやかに流れるメロディは、まるでモナ・リザの穏やかな微笑みを表しているかのようです。
穏やかな音楽が流れる中、やがてどことなくもの悲しいメロディがサックスアンサンブルによって奏でられ、それが全員に受け継がれます。
トランペットの響きが増して曲が最高潮に達すると、やがてまた冒頭の穏やかな音楽に戻り、静かに楽章を閉じます。
第3楽章「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 – Leonardo da Vinci
3楽章は、一転してがらりと雰囲気が変わり、再び激しいテーマで幕を開けます。
木管楽器と金管楽器による三連符の掛け合いで曲が始まり、やがて三連符の嵐が過ぎると、ソプラノサックスによるソロが現れて雰囲気が一変します。
再び1楽章のテーマが現れたかと思うと、メロディは木管楽器に引き継がれ、コラールへとつながります。その後に現れるピッコロのソロは、まるで鳥のさえずりのように心地よく響きます。
やがて再び不穏な音楽が流ると、それを打ち破るようにファンファーレが響き、盛り上がりはいよいよ最高潮に達します。トランペットのハイトーン、そして、金管・木管・弦・打楽器が総力を挙げてフィナーレに。豪快なラストで曲を閉じます。
演奏動画
さて、ここで演奏動画をご紹介します。
楽譜がリリースされてまだ間もないこともあり、執筆時点で演奏動画が公開されているのは出版社による公式動画のみです。演奏は千葉県立幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部です。
それにしても、この演奏は驚くほど上手いです。
ひとり一人の技術がしっかりしていることに加え、とても丁寧に正確に演奏されていて、まさにお手本となる演奏だと思います。
個人的には、音楽をしっかりと引き締めるのに大きく貢献しているトランペットと打楽器パートに特にブラボーを贈りたいです。もちろん他のパートもとても素晴らしく、必聴の演奏です!
編成
編成は以下のとおりです。演奏人数目安は49人からであり、比較的大きな編成となっています。
- Picc. /Fl.1(div.), 2(div.) / Ob.1-2 / Bassn(div.) / E.Cl. / Cl.1-3 / A.Cl. / B.Cl. / Contralto Cl. / S.Sax. / A.Sax.1,2(div.) / T.Sax. / B.Sax. / Tp1(div.),2-4 / Hr.1-4 / Tb.1(div.),2-3 / B.Tb. / Euph.(div.) / Tuba(div.) / St.Bass / Timp. / Tom-toms / Hi-hat / S.D. / Congas / Tri. / Casta. / Tamb. / B.D. / S.Cym. / Anvil / Cym. / Whip / Tam-tam / Cabasa / Tri. / Cowbell(Opt.) / Glock. / Xylo. / Marim. / Vibra. / Harp / Piano
難易度(グレード)
グレード:「5」(あくまで目安です)
演奏時間
演奏時間は、約10分です。
ご存じのとおり、コンクールでは課題曲と自由曲で合計12分という制限時間があります。したがって、コンクールの自由曲として演奏する場合には楽章の選択やカットが必要となります。
なお、各楽章の演奏時間は以下のとおりです。
・1楽章:約3分20秒
・2楽章:約3分30秒
・3楽章:約3分10秒
楽譜の入手方法
楽譜はレンタルとなっています。出版社のフォスターミュージックのWebサイトから申込みができます。
スコア単品なら購入できる!
嬉しいことにスコア単品であれば購入できます。
スコアのみということで、個人でも買える価格なのがありがたいです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は、音楽のことだけでなく、《モナ・リザ》にまつわるエピソードなどにも沢山触れてみました。

それにしても、やっぱり樽屋さんの曲は魅力的でいいよね

そうね。まっしー、また樽屋さんの曲をご紹介しましょうよ
そうですね。樽屋さんの曲は、音楽を聴いているとテーマや情景が目に浮かぶようで、その世界に引き込まれていくような感じがするんですよね。だから私は樽屋さんの曲が好きです。
またいつか樽屋さんの曲をご紹介したいと思います。
ではまた次回の記事でお会いしましょう。お楽しみに!