『ラッキードラゴン ~第五福竜丸の記憶~』解説とおすすめ演奏音源まとめ

福島弘和

皆さん、こんにちは。管理人のまっしーです。

今回は、福島弘和作曲の人気の吹奏楽曲『ラッキードラゴン ~第五福竜丸の記憶~』をご紹介します。

マー坊
マー坊

当サイトが福島弘和さんの曲を紹介するのは初めてのことだね

はい。この曲は彼の多くの作品の中でも最も人気のある注目曲ということで、今回は、演奏動画だけでなく曲の背景なども含めて広くご紹介したいと思います。

これから演奏しようと検討されている方も、既に演奏したことがあるという方も、ぜひお読みいただき、何かのお役に立てれば幸いです。

マー坊
マー坊

この曲、心に響くとってもいい曲なんだよね

お嬢
お嬢

そうね。ところで、「ラッキードラゴン」ってどういう意味なの?

マー坊
マー坊

そう言われてみると、「ラッキー」って感じの曲ではないよね..

確かに、私も、曲名に「ラッキー」とか「ドラゴン」という単語を見つけたとき、少し引っ掛かったんです。決して「幸運な」感じはしない曲ですからね。

一体、この曲名にはどういう意味が込められているのでしょうか?

音楽そのものの話に入る前に、この曲の背景について触れておきたいと思います。

「ラッキードラゴン」とは何か?

ラッキードラゴン」とは、つまり「第五福竜丸」の英訳です。

マー坊
マー坊

「ラッキー(=福)」「ドラゴン(=竜)」ということなんだね

お嬢
お嬢

なるほどね。それにしても、そもそも「第五福竜丸」って何なの?

水爆実験で被爆した「第五福竜丸」

第五福竜丸は、1954年3月1日、ビキニ環礁で行われたアメリカ軍による水爆実験に巻き込まれて多量の放射性降下物(死の灰)を浴びた遠洋マグロ漁船です。

マー坊
マー坊

トップ画はビキニ環礁の写真だね。写真中央が水爆実験で出来た「ブラボークレーター」なんだ

お嬢
お嬢

こんな美しい海で水爆実験が行われたなんて、信じがたいわね

その水爆の威力は、広島型原爆の1000倍を超え、きのこ雲は35km上空まで昇ったとされています。

当時、第五福竜丸に乗船していた23人の乗組員は死の灰をもろに浴びて放射能病に苦しみながら、必死の思いで2週間かけて母校の焼津港に帰り着いたのです。

第五福竜丸の悲劇は「ラッキードラゴン」として世界中に知れ渡ることとなり、その後の世界的な非核運動にも大きな影響を与えています。

作曲の動機となった1冊の絵本

この曲は、1冊の絵本がきっかけとなって作曲されたそうです。

作曲者の福島弘和さんは次のように述べられています。

アメリカの画家のベン・シャーンが、アメリカによるマーシャル諸島沖のビキニ環礁で水爆実験を行った際に、たまたま、マグロ漁でそこに居合わせ、被爆してしまった第五福竜丸を題材に描いた「ここが家だ」と言う絵本に出会ったのがきっかけでこの曲を作曲しました。

その本には「この出来事を人々は忘れない、しかし忘れるのをじっと待っている人たちもいる。」と言う様な文章があり、音楽で福竜丸の事実を忘れさせない事へのきっかけになれたらと思い作曲しました。「ラッキードラゴン」とは、絵本の中の一枚の絵に付けられた題名から取らせていただきました。また、英題は「忘れてはならいない記憶」と言う意味に命題させていただきました。

絵本「ここが家だ」(絵:ベン・シャーン)

私も、実際にこの絵本を読みました。全部で50ページほどの絵本です。

絵を描いたのは、リトアニア出身の米国の画家ベン・シャーンです。彼の絵に、米国出身の詩人アーサー・ビナードが日本語で文章を綴っています。アーサー・ビナードは米国の大学を卒業後、来日して日本語での詩作を始めた人です。

この絵本は、絵・文ともに素朴でシンプルでありながらも、とても力強く訴えかけてくるものがあります。これからラッキードラゴンを演奏する方は、ぜひ一度この絵本を読んでみることをおすすめします。

『ラッキードラゴン ~第五福竜丸の記憶~』を聴く

さて、前置きが長くなりましたが、ここで演奏動画を2つご紹介します。

今回ご紹介するのは、いずれもプロの吹奏楽団による演奏です。

マー坊
マー坊

曲の背景を知った上で聴くと、きっと違った聞こえ方がするよ

①WISH Wind Orchestra

最初にご紹介するのは、当サイトではおなじみのプロの吹奏楽団「WISH Wind Orchestra」による演奏です。

参照元URL:https://youtu.be/V_R5o4RaSes

②フィルハーモニック・ウインズ 大阪

次にご紹介するのは、大阪を拠点とするプロの吹奏楽団「フィルハーモニック・ウインズ 大阪」、通称「オオサカン」による演奏です。

指揮は、作曲者である福島弘和氏ご本人です。

参照元URL:https://youtu.be/Acktto9xwtY

編成

編成は以下のとおりです。

Picc / Fl 1-2 / Ob / Bassoon / Eb Cl / Bb Cl 1-3 / B.Cl / S.Sax / A.Sax 1-2 / T.Sax / B.Sax / Trp 1-3 / Hrn 1-4 / Trb 1-3 / Euph / Tuba / S.Bass / Harp / Piano / Timp / Percussion 5players~(S.D, B.D, 4Tom-Toms, C.Cym, S.Cym, Tam-tam, Tamb, W.Chime, Chimes, Glock., Xylo., Vibra., Marimba,(opt. Crotales))

難易度(グレード)

グレード:「」(あくまで目安です)

なお、ご参考までに、Trumpetの最高音は、1stがHigh C、2ndでもGであり、比較的高音域が要求される曲といえます。

演奏時間

演奏時間は約9分です。

主なソロパート

  • B♭ Clarinet
マー坊
マー坊

冒頭直後の部分だね。物悲しく、心に響くメロディだよね

コンクールでの演奏実績

さて次に、吹奏楽コンクールでの演奏実績についてもご紹介しておきます。

まずは、県大会における演奏実績にスポットを当てて見ていきます。

2009年の初演以来、人気が継続

春日部共栄高校が2009年に初めてコンクールで演奏し全国大会で金賞を受賞したのが最初です。この曲は同校による委嘱作品ということで、その年にこの曲を演奏したのは同校だけでしたが、全国大会金賞のインパクトもあってか、その翌年には一挙に19団体にまで増えています。

それ以降も演奏団体は増え続け、2016年には59団体にまで拡大。近年でもなお年に数十団体が演奏する人気曲となっています(数字は小/中/高/大/職場一般部門の合計です)。

難易度が少し高めでもあり、どちらかというと高校や職場一般部門での採用が多い傾向にありますが、中学の部でも人気の高い曲です。

全国大会での演奏実績は?

2009年に春日部共栄高校が全国大会で金賞を受賞した以降、ほぼ毎年のように全国大会でこの曲が演奏されています。

近年の全国大会では、職場・一般部門で演奏されることが多く、まだ中学部門では全国大会金賞を受賞した団体はありませんが(2020年現在)、近い将来、新しい記録を作ってくれる学校が現れてくれるのを期待したいと思います。

(参考文献)吹奏楽コンクールデータベース「Musica Bella」へのリンク

楽譜の入手方法

ラッキードラゴン ~第五福竜丸の記憶~』の楽譜は、レンタル譜となっています。

ブレーン・オンラインショップのサイトからレンタルの申込みが可能です。

最後に

いかがでしたでしょうか。

心に訴えかけるような物悲しく美しいメロディに、時に怒りすらも感じられる迫力ある音楽。この曲が福島弘和さんの作品の中でも最大の人気曲である理由が分かるような気がしますよね。

福島弘和さんは次のように述べられています。

この曲を吹奏楽コンクールなどで、若い方達が接すれば、少なからずこの出来事や今も続いている核実験など考え感じてもらえると思います。そしてその演奏を聴いてくださったお客様も何かを感じていただけると思います。そうやって「忘れてはならない」輪が少しず広がって行くと望んでおります。

この想いを大事にしながら演奏したいですね。

マー坊
マー坊

まっしー、また福島さんの他の曲も紹介しようよ

お嬢
お嬢

そうよね。皆さん、他の曲のご紹介も楽しみにしていてくださいね

では、また次回の記事でお会いしましょう!

タイトルとURLをコピーしました